
「制作会社から送られてきた契約書、そのまま印鑑を押そうとしていませんか?」
ホームページ制作のトラブルの8割は、契約時の認識のズレから発生します。追加費用の請求、著作権の帰属、勝手に解約できない保守契約……。後で「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、専門知識がなくても確認できる「最低限の防衛ライン」をプロの視点で分かりやすく解説します。
私は普段、AIを活用したSEO記事作成やGoogleマップ運用の自動化システムをプロデュースしています。システム屋の視点から言わせていただくと、Web制作の世界は「情報の非対称性(知識の格差)」が非常に大きい業界です。だからこそ、発注者であるあなたが知識という武器で自衛しなければなりません。
この記事では、弁護士のような難しい法律用語の解説ではなく、「ビジネスとしてどこで損をするのか」という視点で、実戦的な契約書のチェックポイントをお伝えします。
なぜホームページ制作の契約書チェックが「経営リスク」に直結するのか
- 契約書は単なる形式ではなく「トラブル時の解決ルール」である
- 曖昧な契約は、知識のある制作会社側に有利に解釈されるリスクがある
- Webサイトは「資産」であり、その権利を守ることは経営者の義務
多くの経営者様が、「制作会社はプロだから、一般的な良い契約書を用意してくれているだろう」と考えがちです。しかし、制作会社が用意する雛形は、当然ながら「制作会社が損をしないための条項」で固められています。
これは制作会社が悪意を持っているわけではなく、ビジネスとして当然の自衛です。だからこそ、あなたも「発注者としての自衛」を行わなければなりません。契約書の内容を理解せずに判を押すことは、自社のウェブ資産のコントロール権を他人に委ねるのと同じです。
特にIT知識に自信がない場合、「任せます」と言ってしまいがちですが、それが最も危険です。契約書は、制作会社と対等なパートナーシップを築くための最初のステップだと考えてください。
【最重要】「業務範囲(スコープ)」の曖昧さが追加費用トラブルを生む
- 「ホームページ制作一式」という言葉は絶対に使わせない
- 原稿作成、画像選定、サーバー設定が含まれるかを明記する
- 対応端末(スマホ、タブレット)の範囲と古いOSへの対応有無を確認
トラブルの原因ナンバーワンは、「やってもらえると思っていたことが、別料金だった」というケースです。契約書の「業務の範囲」が曖昧だと、制作途中で次々と追加見積もりが届くことになります。
例えば、「デザイン作成」とあっても、修正が何回まで無料なのか記述がない場合、2回目の修正から追加料金を請求されることもあります。また、意外と漏れがちなのが「記事の入稿(流し込み)」です。デザインの枠は作るけれど、中身の文章や過去のブログ記事を移行する作業はどちらがやるのか。ここが抜けていると、納品直前に膨大な手作業が社内に降りかかります。
対策:
契約書とは別に、「詳細な作業分担表(要件定義書)」を添付させ、それを契約の一部として組み込むように交渉してください。「誰が」「何を」「どこまで」やるのか、表形式で可視化することが重要です。
納品後の「検収期間」と「契約不適合責任」の妥当な設定ライン
- 検収期間は「1週間〜2週間」確保するのが発注者の鉄則
- 「納品から〇日で自動的に合格とみなす」という条項に注意
- バグ対応(契約不適合責任)の期間は最低でも半年〜1年は必要
制作会社としては、早く検収(合格出し)をしてもらい、請求書を発行したいのが本音です。そのため、契約書の雛形には「納品後3日以内に異議がなければ検収とみなす」といった短い期間が設定されていることがよくあります。
しかし、本業で忙しいあなたが、納品されたサイトの全ページ、全リンク、問い合わせフォームの動作を3日で完璧にチェックできるでしょうか?不可能です。
弁護士法人 咲くやこの花法律事務所の解説でも指摘されている通り、請負契約においては、仕事の完成を確認して報酬を支払うという流れが基本です。もし十分な確認ができないまま検収印を押してしまうと、後から致命的な不具合が見つかっても「それは検収済みです」と修正費用を請求されかねません。
対策:
検収期間は最低でも「10営業日(2週間)」を確保しましょう。また、納品後に不具合が見つかった場合に無償で修正に応じる「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」の期間が設定されているか必ず確認してください。
知らないと損をする「著作権」の帰属と二次利用の許諾範囲
- 原則として著作権は「制作会社」にあるのが法律のデフォルト
- 「著作権譲渡」の条項がないと、写真の差し替えすら自由にできない
- ソースコード(プログラム)の改変権利をもらわないと将来詰む
ここが最大の落とし穴です。「お金を払って作ってもらったのだから、著作権は当然自社のものだろう」と思っていませんか?
日本の著作権法では、特約がない限り、著作権は「作った人(制作会社)」に帰属します。もし契約書に「著作権を譲渡する」という一文がなければ、あなたは自社のサイトなのに、バナー1枚変更するにも制作会社の許可が必要になります。最悪の場合、別の制作会社にリニューアルを依頼しようとしたら「著作権侵害になる」と止められるケースさえあります。
対策:
「納品と同時に、著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む)を甲(発注者)に譲渡する」という条項を必ず入れてください。もし制作会社が譲渡を拒否する場合は、「著作者人格権を行使しない」という特約と、「無期限かつ独占的な利用、および改変を許諾する」という条項で手を打ちましょう。
サーバー・ドメインの所有権と管理権限を自社で保持する方法
- ドメイン(ネット上の住所)の名義は必ず「自社」にする
- 制作会社名義のサーバー契約は「人質」に取られるリスクがある
- 管理画面の「最高権限(管理者権限)」のアカウントをもらう
「面倒だからサーバーやドメインの契約も任せます」というのは、家の登記簿と鍵を他人に預けるようなものです。
もし制作会社と揉めて契約解除になった場合、あるいは制作会社が倒産した場合、ドメインの名義が制作会社になっていると、Webサイトが突然消滅し、二度と使えなくなるリスクがあります。実際に、月額費用の支払いが遅れた瞬間にサイトを非公開にされたという相談も珍しくありません。
対策:
サーバーとドメインは、必ず「自社名義」で契約し、支払いは自社のクレジットカードで行ってください。その上で、制作会社には「作業用のアカウント」を付与する形にします。これなら、万が一制作会社を変更したくなっても、パスワードを変えるだけで自社の資産を守れます。
支払条件と中途解約時の精算ルールを明確にするべき理由
- 「全額前払い」は極力避ける(持ち逃げ、納期遅延リスク)
- 着手金50%・納品後50%など、分割払いが安全
- 制作途中でプロジェクトが頓挫した場合の精算方法を決めておく
初めての取引で「着手時に全額振込」を要求してくる会社は、資金繰りに余裕がない可能性があります。また、全額支払った後だと、制作会社の対応が遅くなったり、連絡がつきにくくなったりしても、発注者側に対抗手段がありません。
また、双方の事情でプロジェクトが途中で中止になることもあります。その際、「どこまでの作業分を支払うのか(出来高払い)」のルールがないと、全額請求されるか、一銭も返ってこないかという泥沼の争いになります。
対策:
基本は「着手金50%、検収完了後50%」などの分割を交渉しましょう。また、解約時の条項として「解約時点までに完了している業務の対価を支払う」という文言を確認してください。
制作契約とセットで提示される「保守管理契約」の罠と注意点
- 「制作」と「保守」の契約は分けて考えるべき
- 解約の縛り(最低契約期間)が長すぎないかチェックする
- 保守費用に含まれる作業内容が明確か確認する
制作契約の最後に、しれっと「保守契約書」がセットになっていることがあります。「サーバー管理費」「更新代行費」として月額数万円が設定されていますが、ここにも罠があります。
「最低契約期間2年、中途解約時は残存期間の全額を支払う」といった縛りがある場合、サービス内容に不満があっても解約できません。また、月額費用を払っているのに、「テキスト修正は月1回まで」「画像変更は別途費用」など、何もしてくれない保守契約も多いです。
対策:
制作契約(イニシャル)と保守契約(ランニング)は、別々の契約書にするか、明確に条項を分けてください。そして、保守契約は「1ヶ月前予告でいつでも解約できる」状態にしておくのが理想です。制作会社のロックイン(囲い込み)を回避し、常に「サービスの質が悪ければ他社に移る」という選択肢を持っておくことが、健全な関係を維持するコツです。
修正を拒否されたら?制作会社との契約交渉をスムーズに進めるコツ
- 「会社の方針で」ではなく「専門家のアドバイスで」と伝える
- 一方的に要求するのではなく、相手の懸念点を聞き出す
- 修正に応じない会社は、その時点で契約を見送る勇気を持つ
ここまで読んで、「チェックポイントは分かったけれど、プロ相手に修正を要求するのは気が引ける」と思われたかもしれません。しかし、契約書は交渉可能です。
角を立てずに修正を依頼する魔法の言葉は、「顧問税理士(またはコンサルタント)から、この条項だけは修正するように指導を受けまして……」と、第三者のせいにすることです。これなら、あなた自身が制作会社を疑っているわけではないというポーズを保てます。
もし、著作権の譲渡や検収期間の延長など、真っ当な修正要求に対して頑なに拒否する制作会社であれば、契約自体を見直すべきです。契約段階で柔軟性がない会社は、制作が始まってからのトラブル対応も期待できません。
まとめ:トラブルを未然に防ぐチェックリストの活用法
最後に、契約書に印鑑を押す前の最終チェックリストをまとめます。
- 業務範囲: 作業一覧(やること・やらないこと)は明文化されているか?
- 検収期間: 十分な確認期間(10日以上)は確保されているか?
- 著作権: 納品後の権利は自社に移転、または自由な利用が許諾されているか?
- 所有権: ドメイン・サーバーの権利は自社にあるか?
- 解約条件: 保守契約に不当な縛り(長期の違約金など)はないか?
ホームページ制作は、安い買い物ではありません。そして、作った後も長く運用していく大切なビジネスツールです。
「契約書チェック」は、面倒な事務作業ではなく、あなたのビジネスを守るための最初のプロジェクトです。このチェックポイントを活用して、対等で信頼できるパートナーシップを結んでください。それが、成功するWebサイト構築の第一歩です。