
「これくらいの修正、無料でやってよ」「聞いていない追加料金を請求された……」
そんな不満が、大切なビジネスパートナーとの関係を壊していませんか?実は、修正トラブルの9割は『基準の曖昧さ』から生まれます。
私は普段、AIを活用したSEO記事制作やGoogleマップ運用の代行システムを構築・統括しています。その中で、多くのライターさんやエンジニアさん、そしてクライアント企業様の間に入り、数えきれないほどの「修正依頼」を見てきました。
その経験からはっきり言えるのは、この問題は「どちらが悪いか」を議論しても解決しないということです。必要なのは、感情論を排した「フェアな取引基準」と、それを相手に伝える「言葉の選び方」です。
本記事では、泥沼化を避けるための適正相場と、今日から使える具体的な交渉術を専門家視点で解説します。
なぜ修正依頼で追加料金トラブルが起きるのか?根本的な原因
- 「常識」のズレ:発注側と受注側で「修正」に対する認識が根本的に異なる
- 契約の不備:仕様書や契約書に「修正回数」や「範囲」が明記されていない
- 心理的要因:「お金の話をするのは気まずい」という遠慮が事態を悪化させる
トラブルの火種は、悪意ではなく「認識のズレ」にあることがほとんどです。
発注者からすれば、「思った通りのものが納品されていないのだから、直すのは当然」と考えます。一方で受注者(フリーランスや制作会社)からすれば、「指示通りに作ったのに、後から好みを言われても困る(それは別作業だ)」と感じます。
特に、Web制作やライティング、システム開発といった形のないサービス(無形商材)は、完成形のイメージを共有するのが難しく、「言った言わない」の水掛け論になりがちです。
私が運用する現場でも、当初は「このくらいなら……」と善意で対応していた無料修正が積み重なり、最終的に受注側が疲弊してプロジェクトが破綻するケースを何度も見てきました。まずは「修正=無料ではない」という認識を、自分の中でしっかりと持つことがスタートラインです。
【法的視点】修正依頼の追加費用請求は正当な権利か?
- 契約形態による違い:「請負契約」か「準委任契約」かで判断基準が変わる
- 請負契約(成果物重視):契約不適合(欠陥)がない限り、仕様変更は追加費用の対象
- 準委任契約(業務遂行重視):作業時間や工数が増えれば、原則として請求が可能
法律論を振りかざして相手を論破するのはおすすめしませんが、自分の身を守るための「盾」として基礎知識は必要です。
多くの制作・開発案件は、民法上の「請負契約」に該当することが多いでしょう。請負契約において、受注者は「仕事の完成」を約束しています。もし納品物に明らかなミス(誤字脱字、バグ、仕様書との不一致など)があれば、それを直すのは受注者の義務(瑕疵担保責任 ※現在は契約不適合責任)であり、無料対応が基本です。
しかし、発注者側の都合による「仕様変更」や「追加要望」は、当初の契約内容に含まれていない新たな作業となります。これは法的に見ても、堂々と追加費用を請求できる正当な権利です。
参考:freee株式会社『業務委託でよくあるトラブル事例を紹介!契約時の注意点と対処法を解説』でも触れられている通り、契約時に業務内容が曖昧だと、この境界線が引けなくなります。重要なのは、「これはミス(瑕疵)なのか、変更(追加)なのか」を冷静に切り分けることです。
一般的な「無料修正」の範囲と追加料金が発生する境界線
- 無料範囲:明らかなミス、事前の指示書からの逸脱、軽微な表現調整(1〜2回)
- 有料範囲:前提条件の変更、デザインの大幅な作り直し、追加機能の実装
- 境界線:「修正作業にかかる時間」が当初の見積もりのバッファを超えるかどうか
では、現場レベルでの具体的な「線引き」をしましょう。私はチームメンバーに対し、以下のような基準を推奨しています。
1. 無料で対応すべき修正(Contract Non-Conformity)
- **明らかな過失:** 誤字脱字、リンク切れ、コードの記述ミス。
- **指示違反:** 「青色で」と指定されたのに「赤色」で作った場合。
- **微調整:** 「この言い回しを少し柔らかく」といった、構成に影響しない範囲の調整(通常2回程度まで)。
2. 追加料金が発生する修正(Change Request)
- **前提の変更:** 「ターゲットを20代から40代に変えて」といった、記事やデザインの根幹に関わる変更。
- **後出しジャンケン:** 最初の指示になかった要素を、納品段階で「やっぱりこれも入れて」と追加する場合。
- **好みによる無限修正:** 具体的な指示がなく「なんか違う」「もっといい感じで」と繰り返される修正。
特に「前提の変更」は、修正ではなく「作り直し(Re-work)」です。これは新規案件と同等の工数がかかるため、遠慮なく請求すべき領域です。
ケース別:追加料金を支払うべきケース・拒否できるケース
- 支払うべき(請求できる):発注側の指示漏れ、方針転換、確認不足による再作業
- 拒否できる(無料で直すべき):受注側のスキル不足による品質未達、要件の見落とし
- グレーゾーン:参考サイトの提示などがなく、イメージ共有が不十分だった場合
具体的なシチュエーションで見てみましょう。
ケースA:Web記事の執筆
- **状況:** 納品後、「SEOキーワードを変えたいから書き直して」と言われた。
- **判定:** **【完全有料】**
- **理由:** キーワード変更は構成案の作り直しを意味します。これはライターのミスではなく、発注側の戦略変更です。
ケースB:Webデザイン制作
- **状況:** デザイン案を提出したら、「もっとスタイリッシュにして」と曖昧な指示でリテイクが来た。
- **判定:** **【交渉により有料】**
- **理由:** 具体的な指示がない修正は、終わりのない旅になります。「現在の案は当初の要件(ワイヤーフレーム)を満たしています。別案作成となるため追加費用が必要です」と伝えるべきです。
ケースC:システム開発
- **状況:** バグではないが、使い勝手が悪いのでボタンの位置を変えてほしい。
- **判定:** **【程度による】**
- **理由:** 軽微なCSS修正ならサービス範囲内かもしれませんが、ロジック変更を伴うなら有料です。「ここまでなら無料、これ以上は有料」という工数基準(例:1時間以内の作業か否か)を持っておくのが賢明です。
揉める前に!関係を壊さずに追加費用を相談する「魔法のフレーズ」
- ×NG: 「それは契約外です」「追加料金を払ってください」
- ○OK: 「より良い成果物にするために、工数を確保させてください」
- クッション言葉:相手の要望を受け止めつつ、条件を提示する技術
いきなり「金払え」と言えば、当然カドが立ちます。相手も予算管理があるため、急な出費は困るのです。ここで重要なのは、「あなたのプロジェクトを成功させるために必要だ」というスタンスです。
追加請求を切り出す魔法のフレーズ集
1. 仕様変更を依頼された時
「承知いたしました。その変更を加えることで、よりターゲットに響く内容になりますね。ただ、当初の要件から工程が大きく変わるため、『仕様変更』として別途お見積りをさせていただいてもよろしいでしょうか?」
2. 曖昧な「なんか違う」修正が来た時
「フィードバックありがとうございます。現在の方向性で修正を重ねると、納期に遅れが生じる可能性がございます。一度ここまでの工程で区切りをつけ、別案作成として新たな工数で進めさせていただくのはいかがでしょうか?」
3. 無料修正の限界を超えた時
「品質を高めるための修正には協力したいのですが、弊社の規定で『無料修正は2回まで』とさせていただいております。3回目以降は実費工数でのご請求となりますが、どちらの方針で進めましょうか?」
ポイントは、「Yes, But」法です。まず相手の要望を肯定し(Yes)、その上で条件(But)を提示します。これなら相手の顔を立てつつ、こちらの要求を通しやすくなります。
トラブル発生後の対処法:合意が得られない時の解決ステップ
- ステップ1:直ちに作業を中断し、現状を整理する(損切りラインの確定)
- ステップ2:メールやチャットなどの「証拠」を時系列でまとめる
- ステップ3:折衷案(半額負担など)を提示し、早期決着を図る
もし、すでにトラブルになってしまっている場合はどうすればよいでしょうか?
まず、「言われるがままに修正を続ける」のは絶対にやめてください。 ゴールのないマラソンを走り続けることになり、赤字が膨らむだけです。
「このままでは双方にとって良くない結果になる」と伝え、一度手を止めて協議しましょう。
相手がどうしても追加費用を認めない場合、最も現実的なのは「痛み分け」です。
「本来は〇〇円の追加費用ですが、今回は事前のすり合わせ不足もあったため、半額の〇〇円で対応します。その代わり、これ以上の修正は不可とさせてください」と提案します。
100%の正当性を主張して裁判沙汰にするよりも、50%の回収で手打ちにし、次の健全な案件にリソースを割く方が、ビジネス全体で見ればプラスになります。これは私が多くのトラブルを見てきて得た、一つの「生存戦略」です。
【予防策】次回のトラブルを防ぐ「修正ルール」の決め方・伝え方
- 見積書に明記:備考欄に「修正は2回まで無料、以降は〇〇円/回」と書く
- 着手前の確認:「これ以降の変更は有料になります」というマイルストーンを置く
- 記録の徹底:口頭での指示も必ずメールやチャットでログに残す
トラブルを未然に防ぐ最強の方法は、「期待値のコントロール」です。
契約書を交わすのが難しい場合でも、メールや見積書の備考欄に一行加えるだけで、法的効力や抑止力は大きく変わります。
【今日から使える免責文言テンプレート】
- 「修正対応は、初稿納品後1週間以内、かつ原則2回までとさせていただきます。」
- 「当初の要件定義に含まれない追加機能・仕様変更は、別途お見積りとなります。」
- 「大幅な修正(構成の変更を伴うもの等)は、再作成費用(原稿料の50%等)が発生します。」
これらを最初の段階で提示されて、「じゃあ頼まない」というクライアントであれば、遅かれ早かれトラブルになっていたでしょう。このルール提示は、優良なパートナーを見極める「踏み絵」にもなります。
まとめ:納得感のある修正対応がビジネスの信頼を築く
- 曖昧さは敵:ミスなのか変更なのか、境界線を明確にする
- 交渉はパートナーシップ:追加費用は「より良いゴール」のための投資であると伝える
- ルールは身を守る:明文化された基準が、自分も相手も守ることになる
修正トラブルは、どちらかが泣き寝入りするものであってはいけません。
「追加料金を請求すること」は、決して悪いことではありません。それは、あなたがプロとして自分の仕事に責任と誇りを持っている証拠です。同時に、発注者側にとっても、適正な対価を支払うことで、プロジェクトの品質と納期を守ることにつながります。
この記事で紹介したフレーズや基準を、ぜひ次のメールや打ち合わせで使ってみてください。明確な基準を持つあなたの姿勢は、きっとビジネスパートナーとしての信頼をより強固なものにするはずです。