
「クリニックのホームページに100万円もかけたくない」そう考える院長は少なくありません。実際、5万円という低予算でサイトを作ることは可能ですが、そこには医療機関としての『守るべきルール』と『隠れたコスト』が存在します。本記事では、5万円で失敗せずにホームページを作るための現実的なロードマップを解説します。
クリニックのホームページ制作を5万円で実現することは可能か?
- 5万円以下での制作は「自作」または「格安フリーランス」の二択となる
- 制作会社に依頼する場合、5万円は「初期費用」であり月額管理費が別途必要なケースが多い
- 「安さ」の代償は、院長自身が負担する「作業時間」と「素材準備の手間」である
結論から申し上げますと、5万円という予算内でクリニックのホームページを立ち上げることは物理的に可能です。しかし、これは一般的な制作会社にすべてを「丸投げ」できる金額ではありません。
5万円という金額は、Web制作業界において作業者の人件費1〜2日分に相当します。したがって、デザイン、コーディング、ライティング、写真選定のすべてをプロに依頼することは不可能です。この予算で実現するためには、以下のいずれかの方法を選択する必要があります。
- SaaS型ホームページ作成ツール(Wix, Jimdo, STUDIOなど)を利用して自作する
- クラウドソーシング等で個人のフリーランスに「テンプレートへの流し込み」のみを依頼する
- 制作会社の「初期費用0円・月額1万円〜」といったサブスクリプション型契約を結ぶ
ここで重要なのは、金銭的コストを削る分、院長自身の「時間的コスト」や「知的リソース」を投入しなければならないというトレードオフを理解することです。もし、診療準備で手一杯であり、これらに時間を割けないのであれば、5万円での制作は「安物買いの銭失い」になるリスクが高いと認識してください。
5万円プランの正体:テンプレート活用とフリーランス依頼の比較
- 格安制作会社の多くは「既存テンプレート」への画像・文章の流し込み作業である
- フリーランス依頼は当たり外れが大きく、医療知識の有無を確認する必要がある
- ノーコードツール(Wix等)は手軽だが、将来的なSEO対策や機能拡張に制限が出やすい
具体的に5万円以内でどのようなサイトが作れるのか、その「中身」を分解します。
1. テンプレート活用型(制作会社・格安プラン)
多くの格安制作サービスは、あらかじめ用意された医療機関用のテンプレートを使用します。
- メリット: デザインが一定の品質で保たれており、工期が短い。
- デメリット: 他院と似たようなデザインになり、差別化が難しい。レイアウトの変更などのカスタマイズは原則不可。
2. フリーランス・個人への依頼(ココナラ・ランサーズ等)
クラウドソーシングサイトでは、3万〜5万円で制作を請け負う個人が多数存在します。
- メリット: 柔軟な対応が期待できる場合がある。
- デメリット: スキルの差が激しい。「連絡が途絶える」「納期が守られない」といったトラブルのリスクがある。特に医療特有の要件(休診日カレンダーや予約システム連携など)への理解が浅い場合が多い。
3. ノーコードツールでの自作
- メリット: 費用はドメイン・サーバー代程度(月額1,000円〜)で済む。修正が自分で即座に行える。
- デメリット: 独自ドメイン接続や広告非表示にするには有料プランが必要となり、年間コストは意外とかかる。また、SEO(検索エンジン最適化)において、WordPress等のCMSに比べて不利になるケースがある。
安いからこその落とし穴。追加費用が発生しやすい3つのポイント
- 「初期費用5万円」の裏には、高額な月額管理費や更新手数料が隠れている場合がある
- サーバー・ドメインの維持費やSSL化(セキュリティ対策)費用が別請求になりがちである
- スマートフォン対応(レスポンシブデザイン)がオプション扱いだと、総額が跳ね上がる
見積もり段階では5万円に収まっていても、運用開始後に追加費用が発生し、結局高くつくケースが後を絶ちません。以下の3点は契約前に必ず確認すべき項目です。
1. 修正・更新費用の単価
「診療時間の変更」や「年末年始のお知らせ」など、テキスト1行の修正に数千円の手数料を請求される契約があります。5万円のプランは制作工数を極限まで削っているため、アフターサポートが含まれていないことがほとんどです。
2. スマートフォン対応(レスポンシブ)
今や患者の8割以上はスマートフォンからクリニックを検索します。しかし、格安プランの中には「PCサイト制作のみ」が基本で、スマホ最適化は別途数万円のオプションとなっている場合があります。スマホ未対応のサイトは、検索順位が下がるだけでなく、患者の離脱(来院機会の損失)に直結します。
3. 素材(写真・画像)の購入費
サイトに使用するイメージ画像やイラストが別途実費請求になることがあります。無料素材だけではサイト全体がチープな印象になり、医療機関としての信頼性を損なうため、有料素材を使わざるを得なくなり予算オーバーとなるパターンです。
医療広告ガイドラインの遵守は必須。格安制作で注意すべきリスク
- 格安制作者の多くは「医療法」や「医療広告ガイドライン」を知らない前提で動くべきである
- 「最高」「No.1」などの比較優良広告や、加工されたビフォーアフター写真は即違反となる
- ガイドライン違反は行政指導の対象となり、結果的にクリニックのブランドを傷つける
医療機関のホームページは、厚生労働省の「医療広告ガイドライン」の規制対象です。しかし、5万円で請け負うWebデザイナーや一般の制作会社が、この複雑なガイドラインを熟知していることは稀です。
以下は、格安制作で頻発する違反事例です。これらはすべて院長自身がチェックし、修正を指示しなければなりません。
主なNG表現(限定解除要件を満たさない場合)
- 比較優良広告: 「地域No.1」「県内最高峰の技術」といった表現。事実であっても掲載できません。
- 誇大広告: 「必ず治ります」「絶対安全」といった科学的根拠のない保証。
- 患者の体験談: 「○○先生のおかげで治りました」という主観的な口コミや体験談の掲載は原則禁止されています。
- ビフォーアフター写真: 治療内容、費用、リスク・副作用などの詳細な説明を付記せずに写真のみを掲載することはできません。
制作者から上がってきたデザインに「最新の設備で安心!」「口コミ評価No.1」といった文言が入っていた場合、それは制作者が『集客によくあるフレーズ』を無意識に使っているだけです。これをそのまま公開すれば、責任を問われるのは院長自身です。
※参照:厚生労働省 医療広告ガイドライン
予算5万円でも信頼されるサイトを作るために院長が準備すべきこと
- 予算削減の鍵は「院長による素材と原稿の完全支給」にある
- プロ並みの写真は不要だが、明るく清潔感のある写真は必須(スマホ撮影でも工夫次第で可)
- 患者が知りたい情報を網羅した「サイトマップ(構成図)」を自分で決めておく
5万円という低予算で、患者から「信頼できそう」と思われるサイトを作るための唯一の方法は、制作会社(またはフリーランス)の作業を「組み立て」だけに限定させることです。つまり、中身の具材はすべて院長が高品質な状態で用意するのです。
1. サイト構成(サイトマップ)の決定
トップページ、院長紹介、診療案内、アクセス、問合わせ。最低限必要なページを決め、どのページに何を載せるか、手書きのメモで良いので指示書を作ってください。「おまかせ」にすると、修正のラリーが増え、追加料金が発生するか、制作者が疲弊して質が下がります。
2. 原稿の完全支給
「先生の思いをいい感じに書いておきます」という提案は危険です。医療用語の誤用や、前述のガイドライン違反のリスクがあるからです。挨拶文、診療方針、経歴、資格などは、誤字脱字がない状態でテキストデータとして渡してください。
3. 写真素材の質へのこだわり
ウェブサイトの印象は写真で9割決まります。5万円の予算内でプロカメラマンを呼ぶのは不可能です。しかし、最近のスマートフォンでも、自然光が十分に入る晴れた日の昼間に撮影すれば、十分きれいな写真が撮れます。
- 必須写真: 外観、待合室、診察室、院長の笑顔(白衣着用)、スタッフの様子。
- ポイント: 暗い写真は「陰気」「不潔」な印象を与えます。必ず明るさを調整してください。
結論:集患を優先するなら「初期費用」よりも「運用コスト」を重視すべき理由
- ホームページは「作って終わり」ではなく、診療情報の更新こそが重要である
- 初期費用5万円で「更新しにくいサイト」を作るより、運用しやすいシステムを選ぶべき
- 患者にとっての価値は「デザインの豪華さ」よりも「情報の正確さと鮮度」にある
最後に、SEOと患者行動の専門家としての見解を述べます。
5万円でホームページを作ることは可能ですが、そのサイトが「集患」に機能するかは別問題です。患者がクリニックのサイトに求めているのは、豪華なアニメーションや洗練されたデザインではありません。「今開いているか」「どんな先生か」「場所はどこか」という正確な情報です。
初期費用を5万円に抑えることに固執するあまり、更新に専門知識が必要な(自分では触れない)サイトを作ってしまっては本末転倒です。休診情報やインフルエンザワクチンの在庫状況など、リアルタイムな情報を院長自身の手で更新できる環境(WordPressや使いやすいCMS)を選ぶことの方が、長い目で見れば集患コストを下げます。
もし5万円しか出せないのであれば、「Wix」や「Jimdo」、あるいは「STUDIO」といったノーコードツールを使い、自分で更新できる仕組みを構築することをお勧めします。あるいは、初期費用無料・月額数千円で更新システムを利用できる医療専門のサービスを検討するのも一つの賢い選択です。
「安さ」だけで選ばず、「運用しやすさ」と「ガイドライン遵守」を基準に、最適な制作方法を選択してください。