
「開院まで建物が完成しない」「顔出しは控えたい」――。写真がないことは、クリニックのホームページ制作において決して致命的な欠陥ではありません。むしろ、安易な実写よりも、整理されたイラストや図解の方が患者にとって「分かりやすい」サイトになることもあります。本記事では、写真なしで信頼を勝ち取るための具体的なデザイン戦略と、医療広告ガイドラインに沿った正しい素材選びを解説します。
写真なしでも集患できる?クリニックホームページ制作の現実と成功例
- 実写写真がない=信頼がない、という思い込みを捨てる
- 精神科や婦人科など「プライバシー重視」の領域ではイラストが好まれる傾向
- 重要なのは「院内の様子」よりも「悩みが解決するプロセス」の可視化
「先生の顔が見えないと、患者さんは不安になりませんか?」
多くの開業医の先生からこの質問をいただきます。私の結論は、「写真の有無そのものより、不安を解消する情報があるかどうか」が全てです。
確かに、笑顔の院長写真や綺麗な待合室の写真は「安心感」のショートカットにはなります。しかし、開業前の突貫工事で作られた「とりあえずの自撮り」や、生活感丸出しの仮診療所の写真は、かえって「準備不足」「安っぽい」という印象を与え、逆効果になることすらあるのです。
実際、私が支援したメンタルクリニックや美容皮膚科の中には、あえて実写を極力排除し、洗練されたイラストとタイポグラフィ(文字デザイン)だけで構成した事例があります。結果はどうだったかというと、SEO的にも上位表示され、予約率は近隣の「写真たっぷりの古いサイト」を上回りました。
なぜなら、患者が求めているのは「建物の写真」ではなく、「自分の辛い症状をこのクリニックがどう理解し、どう治してくれるか」という物語だからです。写真がない現状を嘆く必要はありません。それを逆手に取り、清潔感とロジックで魅せるチャンスと捉えましょう。
素材写真(ストックフォト)を活用する際に守るべき3つの鉄則
- 明らかに「日本人ではないモデル」の写真は使用しない
- 「どこかで見たことがある」無料素材は避け、有料素材を使用する
- 写真の色味(トーン&マナー)を統一してブランド感を出す
写真がない場合、多くの先生が「フリー素材」や「ストックフォト」に頼ろうとします。しかし、ここには大きな落とし穴があります。選び方を間違えると、一瞬で「テンプレートで作った量産型サイト」に見えてしまうのです。
プロとして、素材写真を使う際に必ず守っていただく鉄則が3つあります。
1つ目は、「外国人モデルを使わない」こと。
美容クリニックなどで見かけますが、地域密着型の内科や整形外科で金髪の外国人モデルが微笑んでいる写真は、患者に「自分事」として捉えてもらえません。無意識に「ここは自分が行く場所ではない(あるいは広告っぽい)」と脳が判断してしまうのです。
2つ目は、「無料素材サイトの『あの人』を使わない」こと。
有名な無料素材サイトのモデルは、他のビジネスブログや広告でも頻繁に使われています。「あ、この人よく見る」と思われた時点で、クリニックとしての「独自性」や「重み」が損なわれます。予算を抑えるとしても、ShutterstockやAdobe Stockなどの有料素材サイト(月数千円程度です)を契約し、あまり流通していない高品質な写真を選んでください。
3つ目は、「トーンの統一」です。
青白い光の写真と、暖色系の温かい写真が混在していると、サイト全体がちぐはぐな印象になります。デザイナーに依頼する際は、「清潔感のあるブルー系で統一したい」「温かみのあるベージュ系で」と指示を出し、写真ごとの色味補正を行ってもらうことが、プロっぽい仕上がりのコツです。
イラストや抽象グラフィックを活用して「誠実さ」と「専門性」を演出する手法
- 診療の流れ(フロー)はアイコン化することで直感的に伝わる
- 臓器や症状の図解は、実写よりもグロテスクにならず理解度が上がる
- 余白と配色を駆使した「ミニマルデザイン」で高級感を出す
写真がない穴を埋める最強の武器、それが「インフォグラフィック(情報の図解)」です。
例えば、初診の流れを説明する場合。受付や問診の様子を無理にフリー素材の人物写真で表現しようとすると、どうしても嘘くさくなります。
それよりも、シンプルで洗練された「線画アイコン」を使って、「予約」→「来院」→「診察」→「会計」というフローチャートを作ったほうが、スマホで見た時の視認性は格段に上がります。
また、医療の現場において「実写」は必ずしも正義ではありません。皮膚疾患や外科処置の説明などは、実写写真だと生々しすぎて患者が不快感を抱くことがあります。
これをやわらかいタッチのイラストで表現することで、「怖い」という感情を取り除きつつ、専門的な治療内容を分かりやすく伝えることができます。これは「患者への配慮(ホスピタリティ)」として伝わります。
さらに、最近のウェブデザインのトレンドは、余計な装飾を削ぎ落とした「ミニマルデザイン」です。
写真で画面を埋め尽くすのではなく、たっぷりと余白を取り、美しいフォントでメッセージを伝える。背景色にこだわり、クリニックのテーマカラー(例えば安心感を与えるペールグリーンや、信頼感のあるネイビー)を効果的に使う。
これにより、写真が一枚もなくとも「知性」と「清潔感」を感じさせるサイトは十分に構築可能です。
【重要】医療広告ガイドラインに抵触しない素材選びと表現の注意点
- ウェブサイトも広告規制の対象。虚偽・誇大広告は厳禁
- 素材写真で「治療効果」を誤認させるような使い方はNG
- ビフォーアフター写真がないことは、リスク回避の面ではメリットでもある
ここで、専門家として絶対に無視できない話をします。厚生労働省の「医療広告ガイドライン」についてです。
現在、クリニックのホームページは広告規制の対象となっています。写真選びにおいて最も注意すべきは、「優良誤認」や「虚偽広告」にならないかという点です。
例えば、ストックフォトの「スリムになった女性」の写真を使って、あたかも当院の痩身治療の結果であるかのように見せること。これは完全にNGです。
また、「最新設備」として、自院にはない高度医療機器のイメージ写真を使用することも、患者に誤解を与えるため避けるべきです。
ガイドラインでは、患者等の主観に基づく体験談や、治療内容を誤認させるような加工写真(ビフォーアフターの不適切な提示など)が厳しく規制されています。
その点、「実写写真がない」ことは、リスク管理の観点ではポジティブに働くこともあります。安易なビフォーアフター写真に頼らず、治療のメカニズムや医師の方針を「文章と図解」で論理的に説明することは、ガイドラインを遵守する極めて誠実な姿勢です。
「当院は法令を遵守し、正しい情報のみを提供します」というスタンスは、リテラシーの高い患者層からの深い信頼に繋がります。
写真の有無より重要!患者が「このクリニックなら安心」と判断する情報の質
- 「院長挨拶」の文章力こそが最大の差別化ポイント
- アクセス情報や診療時間は、デザイン性より「見やすさ」を最優先
- FAQ(よくある質問)の充実度で、患者の不安を先回りして解消する
写真がない分、患者は何を見て判断するのでしょうか? それは「言葉」です。
特に「院長挨拶」は、実写がないサイトにおいて心臓部となります。
ありきたりな経歴の羅列ではなく、「なぜこの地で開業したのか」「どのような医療を提供したいのか」「患者さんにどうなってほしいのか」という想いを、院長自身の言葉で丁寧に綴ってください。
顔が見えなくても、文章から滲み出る人柄や情熱は必ず伝わります。「写真はないけれど、この先生なら話をしっかり聞いてくれそうだ」と思わせれば勝ちです。
次に重要なのが「UI(ユーザーインターフェース)」です。
おしゃれな写真があっても、休診日がどこに書いてあるか分からないサイトは失格です。
・今やっているか(診療時間)
・どこにあるか(Googleマップへのリンク)
・どうやって予約するか(Web予約ボタン)
これらの導線を、写真に頼らず大きく、明確に配置すること。これだけで「使いやすい=親切なクリニック」という評価が得られます。
また、FAQ(よくある質問)を充実させることも有効です。「駐車場はありますか?」「子供連れでも大丈夫ですか?」といった些細な疑問に対し、丁寧なテキストで回答を用意しておくこと。これが「見えない院内の様子」を補完し、来院のハードルを下げます。
制作会社への依頼前に確認したい「写真なし」でも映える構成案の作り方
- 「写真は後で差し替える前提」で、テキスト主体のレイアウトを依頼する
- デザイナーには「タイポグラフィ(文字)で見せるデザイン」とオーダーする
- メインビジュアルはキャッチコピーの力で勝負する
最後に、制作会社へ依頼する際の具体的なオーダー方法をお伝えします。
まず、「写真は開院後に撮影して追加したい」という旨を正直に伝えましょう。その上で、「現在は写真がないため、テキストとイラスト、そしてタイポグラフィ(文字のデザイン)で見せるサイトを作りたい」と明確に指示してください。
プロのデザイナーであれば、「写真がないなら、文字の配置や余白の取り方、配色の工夫で美しく見せよう」とスイッチを切り替えてくれます。
逆に、これらが苦手な制作会社だと、写真が入るべきスペースに「No Image」という箱を置いただけの未完成なサイトになってしまいます。
また、トップページのメインビジュアル(一番最初に目に入る部分)には、写真の代わりに「強力なキャッチコピー」を配置しましょう。
「地域の健康を守る、あなたのかかりつけ医」
といった言葉を、洗練されたフォントで大きく配置するだけで、写真はなくとも強いメッセージ性を発揮します。
写真がないことを「未完成」と捉えず、「言葉とデザインで勝負する戦略的フェーズ」と捉えてください。
建物が完成し、スタッフが揃い、運営が落ち着いたタイミングで、プロのカメラマンを入れて撮影すれば良いのです。まずは、中身(コンテンツ)のあるサイトで、一日も早く「Web上の開院」を果たしましょう。それが、機会損失を防ぐ最良の手です。