
「ホームページを作るだけで、なぜ毎月数万円も払い続けなければならないのか?」そんな疑問をお持ちではありませんか。
都内での開業、本当にお疲れ様です。テナントの契約、内装工事、医療機器の選定……息つく暇もなく決断を迫られ、通帳からは見たこともない額の資金が出ていく毎日かと思います。多額の融資を背負っての船出において、「これ以上、固定費(ランニングコスト)を増やしたくない」と考えるのは経営者として極めて健全な感覚です。
にもかかわらず、多くの制作会社は当たり前のように「月額保守費 3万円」や「管理費 5万円」といった見積もりを出してきます。「ITは詳しくないから、プロに任せないと怖い」という先生の不安につけ込み、何も更新作業が発生しない月でさえ費用を徴収するサブスクリプション契約を結ばせようとするのです。
本記事では、クリニック専門のWeb制作者である私が、クリニックのホームページを『初期費用のみ』で制作し、月々の業者支払いを0円にする具体的な方法から、後悔しないための注意点までを解説します。これは単なる「安売り」の話ではありません。先生ご自身がオーナーシップを持ち、賢くコストをコントロールするための「経営防衛策」です。
クリニックのホームページ制作は「初期費用のみ」で可能なのか?
- 結論:可能である。ただし「完全無料」ではない
- 制作費(初期費用)と維持費(ランニングコスト)を分けて考える
- 「月額0円」の正体は、制作会社へのマージンをカットすること
結論から申し上げますと、制作会社への月額支払いをなくし、「初期費用のみ」で契約を完結させることは十分に可能です。これを実現するためには、まず費用の内訳を正しく理解する必要があります。
ホームページにかかる費用は、大きく分けて2つあります。
1. 制作費(イニシャルコスト):サイトを作るためのデザイン・構築費用。
2. 維持費(ランニングコスト):サイトを表示し続けるためのサーバー・ドメイン代、および保守管理費。
多くの制作会社が請求する「月額費用」には、サーバー・ドメイン代の実費に加えて、彼らの利益となる「保守管理費」が上乗せされています。例えば、サーバー代の実費が月額1,000円程度だとしても、管理費を乗せて月額30,000円で請求するわけです。
つまり、先生が目指すべき「月額0円」とは、「サーバーとドメインをクリニック名義で直接契約し、制作会社への仲介マージンをカットする」という状態を指します。これにより、制作会社への支払いは制作時の一回切り(買い切り)となり、ランニングコストは実費(月額1,000円〜数千円程度)のみに圧縮できます。
月額費用0円を実現する3つの制作ルート
- ルート1:フリーランス・小規模制作会社への「買い切り」依頼
- ルート2:SaaS型サービスの無料プラン(非推奨)
- ルート3:WordPress構築+自社サーバー契約(推奨)
制作会社への月額支払いをなくすには、主に3つのルートがあります。それぞれのメリット・デメリットを整理しましょう。
ルート1:完全オリジナル制作での「買い切り」契約
オーダーメイドでHTML/CSSを組み上げ、納品と同時に契約を終了するパターンです。
- メリット:デザインの自由度が高い。セキュリティリスクが比較的低い。
- デメリット:更新(休診のお知らせ等)をするたびに、都度払いの修正費用(スポット依頼)が発生する。ITに詳しくない場合、文字一つ直すのにもエンジニアの手が必要になる。
ルート2:WixやJimdoなどの無料プラン
いわゆる「誰でも簡単に作れる」サービスです。
- メリット:初期費用も月額も無料にできる。
- デメリット:独自ドメイン(clinic-name.comなど)が使えない、広告が勝手に表示されるなど、医療機関としての信頼性が著しく損なわれるため、クリニック経営には不向きです。
ルート3:WordPress構築 + サーバー直接契約【推奨】
世界で最も使われているシステム「WordPress」を使い、先生が契約したサーバーにインストールして納品してもらう方法です。
- メリット:「お知らせ」や「診療時間の変更」をブログ感覚で先生やスタッフが更新できる。 制作会社との保守契約がなくても、自院で運用を回せる仕組みが作れる。
- デメリット:最低限のセキュリティ管理(プラグインの更新など)を自院で行う必要がある。
私が最もお勧めするのは、ルート3です。初期費用として制作費を払い、システム(WordPress)を構築してもらった後は、制作会社の手を離れて自走するスタイルです。これなら、業者への月額支払いはゼロになります。
「初期費用のみ」で依頼する際の隠れたリスクと対策
- 「更新システム」が含まれているか必ず確認する
- 「スポット修正費」の単価表を事前に見せてもらう
- 医療広告ガイドラインの知識があるかテストする
「月額費用の呪縛」から逃れようとするあまり、安易な「格安・買い切り業者」に飛びつくと、別の落とし穴にはまることがあります。
リスク1:更新機能がない「作りっ放し」サイト
「初期費用のみで安く作ります」という業者の中には、更新システム(CMS)を導入せず、単なる画像とテキストの張り合わせで納品するケースがあります。これでは、年末年始の休診案内を出すだけで「修正費 1回 5,000円〜」といった追加請求が発生します。結果的に、ランニングコストが高くつくのです。
対策:「お知らせや診療案内を、自分たちで簡単に更新できるように作ってもらえますか?」と必ず質問してください。
リスク2:セキュリティの放置
保守契約がないということは、サイトのセキュリティ管理責任者が「先生自身」になることを意味します。WordPressなどのシステムは定期的なアップデートが必要ですが、これを放置するとハッキングやウイルス感染のリスクが高まります。
対策:納品時に「自動バックアップの設定」や「セキュリティプラグインの導入」まで完了しているか確認しましょう。また、万が一トラブルが起きた際に、スポット(単発)で対応してくれるかどうかも重要です。
リスク3:医療広告ガイドライン違反
安さを売りにする制作会社は、医療特有の法律(医療広告ガイドライン)に詳しくないことが多いです。「最高の治療」「絶対治る」といったNG表現をそのまま掲載され、保健所から指導を受けるリスクがあります。
対策:過去の制作実績にクリニックが含まれているか確認し、ガイドライン遵守の意識があるか担当者に尋ねてください。
結局どっちが安い?「初期費用0円型」vs「初期費用のみ(買切り)型」
- 5年総額で見ると「買い切り型」が圧倒的に安い
- 「初期費用0円」は実質的な高金利ローンと同じ
- Web幹事のデータを基にした相場観を知る
ここで、具体的な数字で比較してみましょう。
多くのリース契約やサブスク型HPサービスは「初期費用0円!」を謳いますが、5年(60ヶ月)の契約縛りがあるケースがほとんどです。
パターンA:初期費用0円・月額3万円(リース契約型)
- 初期費用:0円
- 5年間のランニングコスト:30,000円 × 60ヶ月 = 1,800,000円
- 5年総額:1,800,000円
- ※しかも契約終了後、サイトの所有権が業者にあり、解約するとサイトが消えるケースが多い。
パターンB:初期費用50万円・月額0円(買い切り・自社運用型)
- 初期費用:500,000円(制作費)
- 5年間のランニングコスト:1,000円(サーバー代実費) × 60ヶ月 = 60,000円
- 5年総額:560,000円
いかがでしょうか。目先のキャッシュアウトを抑えるためにパターンAを選ぶと、長期的には3倍以上のコストがかかる計算になります。開業時の資金繰りが厳しいのは重々承知していますが、長い目で見れば「初期費用を払って、資産としてサイトを持つ」ほうが圧倒的に賢い選択です。
参考までに、Web制作の相談・依頼サイト「Web幹事」のデータによると、病院・クリニックのホームページ制作の相場(中央値)は約41.8万円、発注金額の8割が100万円以下となっています。50万円〜80万円程度の初期投資でしっかりとした土台を作り、ランニングコストを抑えるのが、最もコストパフォーマンスの高い戦略と言えます。
医療機関が「安さ」だけで制作会社を選んではいけない理由
- サイトの質は「患者さんの信頼」に直結する
- SEO対策(検索順位)が弱いと、存在しないのと同じ
- 「患者導線」がないサイトは集患できない
コスト削減は重要ですが、「とにかく安ければいい」と考えて5万円や10万円の格安業者に依頼するのは危険です。なぜなら、クリニックのホームページは「看板」であると同時に「受付スタッフ」でもあるからです。
デザインが崩れていたり、スマホで見にくかったりするサイトを見た患者さんはどう思うでしょうか。「このクリニック、経営は大丈夫かな?」「器具の消毒とかも適当かもしれない」と、医療の質にまで不安を抱いてしまいます。
また、私が専門とするSEO(検索エンジン対策)の観点からも、ただ作っただけのサイトは検索結果に表示されず、誰にも見てもらえない「Web上の孤島」になりがちです。
「内科 東京」や「地域名 + 内科」で検索した患者さんが、迷わず先生のクリニックにたどり着き、「ここなら安心して受診できそうだ」と感じて予約ボタンを押す。この「患者行動導線」が設計されていなければ、制作費がいくら安くても、それは「安物買いの銭失い」になってしまいます。
保守契約なしで運用する際に最低限知っておくべき管理知識
- ドメイン・サーバーの更新期限は命綱
- WordPressの「更新ボタン」を押す習慣
- 困ったときの「駆け込み寺」を確保しておく
月額費用0円(保守契約なし)を選択する場合、先生ご自身が「サイトの管理者」になります。ITに詳しくなくても、これだけは守っていただきたいポイントが3つあります。
- ドメインとサーバーの支払い漏れに注意
クレジットカードの有効期限切れなどで支払いが止まると、ある日突然サイトが表示されなくなります。さらに一定期間が過ぎるとドメインの権利を失い、二度と戻ってきません。これだけは絶対に避けてください。 - システムのアップデート
WordPressを使用する場合、管理画面に「更新してください」という通知が出ます。基本的にはクリック一つで終わりますが、稀に表示崩れが起きることがあります。自動バックアップ機能があるサーバーを選んでおけば、万が一の際もボタン一つで昨日の状態に戻せます。 - スポット対応のパートナーを持っておく
普段は月額費を払わずとも、「どうしても手に負えないエラーが出たとき」や「大規模なリニューアルをしたいとき」に相談できる相手を見つけておきましょう。制作を依頼した会社がスポット対応を受けてくれるか、契約前に確認するのがベストです。
まとめ:長期的なコストパフォーマンスを最大化する選び方
- 「月額保守費」の呪縛から逃れ、資産になるサイトを持とう
- 初期費用は「投資」。5年スパンで損得を判断する
- 「自分で更新できる仕組み」を作ってくれるパートナーを選ぶ
開業準備でお金が出ていく不安、痛いほど分かります。しかし、だからこそ目先の「初期費用0円」という甘い言葉に惑わされず、5年後、10年後のクリニック経営を見据えた選択をしてください。
「初期費用のみで、しっかりとした所有権のあるサイトを作りたい」
「月々の管理費を払うのではなく、自分で更新できる仕組みを納品してほしい」
制作会社への問い合わせで、ぜひこう伝えてみてください。この要望に対して、「それならサーバーはご自身で契約していただき、WordPressで構築しましょう」と具体的に提案してくれる業者こそ、先生の利益を第一に考える信頼できるパートナーです。
ITに詳しくないからといって、言いなりになって固定費を払い続ける必要はありません。賢い選択で、無駄なコストを削減し、その分を医療機器やスタッフ、そして何より患者さんのために使ってください。先生のクリニックの成功を、心より応援しております。