
「月々3万円なら安い」と思って契約したホームページリース。しかし、いざ解約しようとすると、数百万円の残債を一括請求される現実に直面していませんか?
クリニックにとって、ホームページは単なる広告ではなく、患者様との信頼の架け橋です。本記事では、多くの院長が陥るリースの罠から抜け出し、大切なドメインや信頼を守りながら、健全なWEB運用を取り戻すための具体的な手順を解説します。
なぜクリニックのホームページリースは「解約できない」という罠に陥るのか
- ホームページリース契約は「賃貸借」ではなく、実質的な「金融契約(借金)」である
- リース会社、制作会社、クリニックの「三者間契約」の仕組みが解約を阻む
- 「サービスの解約」と「リース契約の解除」は別問題として扱われる
「気に入らないから解約したい」「効果がないからやめたい」。
一般的なサービスであれば当然の権利のように思えますが、ホームページリースの世界では、この常識が通用しません。先生が直面している「解約不可」の壁、その正体は「三者間契約」という法的構造にあります。
先生は「ホームページ制作会社」と契約したつもりでも、実際の契約書上の相手は「リース会社」になっているはずです。これは、リース会社が先生の代わりに制作費(例えば200万円)を制作会社に一括で支払い、先生はその代金を利息込みで5年かけてリース会社に返済しているという形だからです。つまり、実態は「ホームページを借りている」のではなく、「ホームページを買うための借金をしている」状態なのです。
そのため、制作会社の対応が悪くても、リース会社からすれば「私たちはお金を貸しただけなので、返済義務は果たしてください」という論理が成立してしまいます。これが、中途解約が原則不可とされる最大の理由です。
まずはこの「借金である」という厳しい現実を直視することが、解決への第一歩となります。
悪質なホームページリース商法によくある3つの手口と特徴
- 「初期費用0円」を強調し、長期の総支払額を曖昧にする
- タブレットやソフトなど、不要な「有形物」を無理やりセットにする
- 口頭での「SEO保証」や「更新無料」が契約書には記載されていない
都内で開業して3年目、日々の診療に追われる先生の多忙な隙をついてくるのが、悪質なリース業者の手口です。彼らは医療現場のWEBリテラシーの格差を巧妙に利用します。
1. 初期費用0円の甘い罠
開業時の資金繰りが大変な時期に、「手出し0円で立派なサイトが持てます」という言葉は魅力的に響きます。しかし、月額3〜5万円の5年(60回)払いは、総額で180万〜300万円になります。一般的なクリニックサイト制作の相場(50万〜100万円程度)と比較しても、異常に高額な契約を結ばされているケースがほとんどです。
2. 不自然な「物品」のセット販売
本来、形のない「ホームページ制作役務」はリースの対象になりにくいものです。そこで業者は、更新用ソフトが入ったCD-ROMや、安価なタブレット端末、あるいは複合機などをセットにし、「物品のリース」という体裁を整えます。先生の手元に、ほとんど使っていない謎のソフトや機材はありませんか? それがこの契約の「本丸」にされてしまっているのです。
3. 「言った言わない」の更新サポート
「更新は電話一本でやります」「SEO対策で検索順位を上げます」。営業マンの言葉を信じて契約したものの、実際には対応が遅い、あるいは修正のたびに追加料金を請求される。契約書をよく見ると「更新は有料」「SEOの成果は保証しない」と小さく書かれている。これが典型的なパターンです。
リース契約を解約したい場合に確認すべき「契約書」のチェックポイント
- 契約書の種類が「ファイナンスリース」か「ビジネストレーニング(役務提供)」か
- 「物件受領証」に捺印してしまっているか(検収完了の有無)
- 特約条項に「中途解約に関する例外規定」があるか
感情的に「解約したい」と電話をする前に、まずは手元の契約書を冷静に分析しましょう。ここが反撃の拠点になります。
まず確認すべきは、「物件受領証(検収書)」の日付と捺印です。リース契約において、この書類にハンコを押すことは、「納品物に問題はありません。支払い義務が発生することを認めます」と宣言したことと同義です。もし、サイトが公開されていない、あるいは未完成の段階でこれを押させている場合、リース会社に対して「契約不履行」を主張できる可能性があります。
次に、契約内容が「ファイナンスリース契約」になっているかを確認してください。もし、形式的にリース契約であっても、実態として「サポート業務」がメインの契約(役務提供契約)に近い場合、特定商取引法や消費者契約法の観点から争う余地が生まれることもあります(※ただし、事業用契約のため消費者保護は適用されにくいのが現実です)。
ここでのポイントは、「契約書と現状の矛盾」を探すことです。「あるはずの機能がない」「納品されたソフトが動かない」。こういった「モノの不備(瑕疵)」があれば、それをテコに交渉を進めることができます。
【現実的な解決策】解約・契約解除を進めるための3つのステップ
- 残債の一括返済(買い取り)による早期の「損切り」
- 制作会社側の「債務不履行」を理由にした契約解除の交渉
- リース会社ではなく、制作会社への損害賠償請求との相殺
法的には「原則解約不可」ですが、実務的にはいくつかの出口戦略があります。
ステップ1:残債の一括返済(損切り)
もっとも確実で、かつ精神的な負担を最速で取り除く方法は、残りのリース料を一括で支払い、契約を終了させることです。「なんで役に立たないものにお金を払うんだ」という怒りは痛いほど分かります。しかし、これ以上毎月のコストを垂れ流し、ストレスを抱え続ける時間的損失を考えると、手切れ金として処理し、新しいサイト運用に切り替えるのが、経営判断としてもっとも賢明な場合があります。これを「所有権移転」として処理し、ドメイン権限を確実に回収します。
ステップ2:制作会社への交渉(債務不履行)
リース会社への支払いは止められませんが、原因を作った「制作会社」に対して責任を追及することは可能です。「更新対応がない」「集客効果がない(営業時の説明と著しく異なる)」といった証拠を揃え、制作会社に対して契約解除や損害賠償を求めます。制作会社が非を認めれば、彼らがリース残債を肩代わりして解約合意に至るケースも稀にあります。
ステップ3:第三者機関の介入
業者があまりに悪質な場合、中小企業庁の相談窓口や弁護士名での内容証明郵便を送ることで、相手の態度が軟化することがあります。彼らも「詐欺的商法」として公になることを恐れるからです。
注意!解約時に「ドメイン」や「コンテンツ」を失わないための交渉術
- ドメイン(URL)の名義人が誰になっているか「Whois」で確認する
- 解約交渉の条件として「ドメイン移管(AuthCodeの提示)」を最優先にする
- サイト内の文章や画像の著作権がどちらに帰属するかを確認する
先生、ここで一番気をつけていただきたいことがあります。それは、「お金の問題以上に、ドメイン(URL)の問題が致命傷になり得る」ということです。
開業3年目ともなれば、クリニックのURLは患者様のスマホのブックマークに入っていたり、Googleマップに登録されていたり、地域のポータルサイトにリンクされていたりします。もし解約と同時にこのURLが消滅してしまったらどうなるでしょうか?
「閉院したのかな?」と患者様に誤解され、積み上げてきた地域での認知が一瞬でゼロになります。
交渉の絶対条件は「ドメインの移管」です。
契約書上、ドメインの所有権が業者にある場合でも、「残債を処理する代わりにドメインは譲渡する」という合意を取り付けてください。具体的には「AuthCode(オースコード)」の発行を要求します。これさえあれば、他の管理会社へドメインを移すことができます。
また、サイト内の「院長挨拶」や「診療案内」などの文章や写真。これらがリースの「物件」に含まれている場合、解約後は使用できなくなる可能性があります。次のサイトを作るために、自分たちが提供した原稿や写真は必ずバックアップを取っておきましょう。
医療法違反のリスク?放置できない「更新不可」なリースサイトの危険性
- 更新できないサイトは「医療広告ガイドライン」違反の温床になる
- 誤った診療時間や古い情報の掲載は、患者トラブルや行政指導のリスク
- リース業者の倒産等で、サイトが「削除も修正もできない」状態が一番怖い
「もう解約も面倒だから、リース満了まで放置しておこう」。そう考える先生もいらっしゃいますが、これは非常に危険です。特に医療機関においては、致命的なリスクを孕んでいます。
医療法における「医療広告ガイドライン」は年々厳格化しています。例えば、数年前には許されていた表現が、今はNGになっていることもあります(例:「絶対治る」「最高の名医」などの表現)。
もし、リース会社とのトラブルでサイトの更新ができなくなっている間に、こうした不適切な表現が放置されていたらどうなるでしょうか? 保健所からの是正命令や行政指導の対象となります。
さらに怖いのは、「修正したいのにログインできない、削除もできない」というゾンビサイト化です。診療時間が変わったのに修正できず、来院した患者様からクレームが入る。これはGoogleの口コミ(MEO)を悪化させ、新規患者の獲得を阻害します。
「更新できないサイト」を持っていることは、マイナスでしかありません。リスク管理の観点からも、主導権を取り戻す必要があります。
リース契約トラブルを弁護士や専門家に相談すべき基準とタイミング
- 残債額が高額(100万円以上など)で、経営へのインパクトが大きい場合
- 業者が倒産・連絡不通、あるいは恫喝的な取り立てがある場合
- 契約時の説明と実態があまりに乖離しており、詐欺の疑いがある場合
自力での交渉に限界を感じたら、専門家を頼るべきです。
ただし、弁護士費用(着手金や成功報酬)がリース残債を上回ってしまっては本末転倒です。目安として、残債が数万円〜数十万円程度なら「勉強代」として支払う方が安く済むことが多いですが、残債が100万円を超える場合は、弁護士を入れて交渉することで減額や和解に持ち込めるメリットが大きくなります。
特に、「リース会社だと思っていたら、実は怪しいクレジット契約だった」「業者が計画倒産した」といった複雑なケースでは、即座に法的なアドバイスを受けてください。
失敗しないクリニックホームページの作り直し方:リースに頼らない運用へ
- ホームページは「所有」し、資産として育てるもの(WordPress等が推奨)
- サーバーとドメインは必ず「クリニック名義」で直接契約する
- デザインの美しさより「患者様が予約しやすい導線」を重視する
今回の経験は、決して無駄ではありません。先生は「WEB業界の悪しき商習慣」を知り、何を守るべきかを学ばれました。
次のホームページ制作では、以下の3点を徹底してください。
- 契約形態は「買い切り」または「サブスク(いつでも解約可)」にする
リース契約は絶対にNGです。制作費は初期費用として支払い、月額費用は保守管理費のみ(いつでも解約可能)という契約を選びましょう。 - ドメインとサーバーは自院名義で契約する
制作会社に代行してもらう場合でも、契約の名義(アカウント情報)は必ずクリニックのものにしてください。これがあれば、制作会社が倒産してもサイトを守れます。 - WordPress(ワードプレス)などの汎用システムを使う
特定の業者しか触れない独自システムではなく、世界中で使われているWordPressなどを採用しましょう。そうすれば、業者の対応が悪ければ、他の業者に管理を移すことが容易になります。
クリニックのホームページは、5年間塩漬けにする「飾り」ではありません。日々の診療に合わせて成長させていく「資産」です。
現在のリース契約という重荷を下ろし、先生ご自身がコントロールできる、健全なWEB運用への一歩を踏み出しましょう。まずは契約書の確認と、ドメインの所有状況のチェックから始めてみてください。応援しています。