
「ホームページを作りたいけれど、打ち合わせに割く時間が全くない……」。そんな悩みを抱える先生にとって、制作の全てを代行してくれる「丸投げ」は、一見すると救世主のような選択肢に映るはずです。
日々の診療、スタッフのマネジメント、そして経営課題。先生の肩には既に重すぎるほどの責任がのしかかっています。「Webのことくらい、誰かが勝手にやってくれればいいのに」と感じるのは、経営者として至極真っ当な感覚です。
しかし、ここで一つだけ、プロとして警告させてください。中身を確認せずに業者任せにした結果、医療広告ガイドライン違反で保健所の行政指導を受けたり、あるいは多額のリース契約で身動きが取れなくなったりする失敗例が後を絶ちません。
本記事では、先生の貴重な時間を守りつつ、集患につながる「質の高いサイト」を安全に手に入れるための、正しい「丸投げ」の作法を解説します。
忙しい院長が「ホームページ制作を丸投げ」すべき3つの理由
- 「時間」こそが医師にとって最大の資産であり、診療に集中すべきだから
- 素人の手作り感は、患者からの「医療の質」への不信感に直結するから
- 最新のSEOやモバイル対応は、専門家でなければ追いつけない領域だから
先生がご自身でホームページを作ろうとしたり、スタッフに兼務で作らせようとするケースをたまに見かけますが、私はこれには明確に反対します。なぜなら、先生の1時間は、Web制作の勉強に費やすにはあまりにも価値が高すぎるからです。
「丸投げ」すべき最大の理由は、先生が「医師としての本業」に専念するためです。
また、患者の心理的動線を考えてみてください。現代の患者は、来院前に必ずスマホでクリニックを検索します。その時、表示されたサイトのデザインが崩れていたり、情報が古かったりしたらどう思うでしょうか。「このクリニック、医療機器も古いのではないか?」「衛生管理は大丈夫か?」という、医療の質に対する疑念へと直結してしまうのです。
Webの世界は日進月歩です。Googleの検索アルゴリズムや、スマホでの見やすさ(UI/UX)のトレンドは常に変化しています。これらをキャッチアップし続けるのは、プロである私たちでさえ骨の折れる作業です。だからこそ、餅は餅屋。信頼できるプロに任せることこそが、最短で正解にたどり着くルートなのです。
丸投げで後悔しないために!知っておくべき3つのリスクと落とし穴
- 「リース契約」の罠:解約できず、所有権も得られない最悪のケース
- 「ドメイン・サーバー」の人質化:制作会社を変えたくても変えられない
- 「画一的なテンプレート」:近隣の競合医院と見た目が被り、差別化できない
「丸投げ」は推奨しますが、「誰にでもいいから投げる」のは危険すぎます。特に注意していただきたいのが、営業電話などでよくある「ホームページのリース契約」です。
通常、ホームページは無形資産であり、リースの対象にはなり得ません。しかし、ソフトウエアやタブレット端末と抱き合わせにして、5年〜7年の長期リース契約を結ばせる業者が存在します。これにサインしてしまうと、途中で解約ができず(残債の一括請求をされる)、契約満了後もホームページの所有権が先生の手元に残らないという事態に陥ります。
また、ドメイン(.comなどの住所)やサーバーの名義を制作会社にしてしまうと、将来その会社と縁を切りたいと思った時に、「ドメインは渡さない」と言われ、長年積み上げたSEO評価を捨ててゼロから作り直さなければならなくなるリスクもあります。
そして、安価な丸投げプランに多いのが、既存のテンプレートに写真とテキストを流し込むだけの手法です。これでは、先生のクリニックの「温かみ」や「診療方針」が伝わらず、近隣の他院と代わり映えのしないサイトになってしまいます。これでは、わざわざ先生のクリニックを選ぶ理由を患者に提示できません。
医療広告ガイドライン遵守は必須:安全な制作会社を見極める基準
- 「地域No.1」「最高の名医」などの比較優良広告は厳禁
- ビフォーアフター写真の掲載には、詳細な説明記述が必須条件
- 一般の制作会社は「医療法」を知らないことが多いという事実
私がクリニック専門で制作を行う際、最も神経を使うのが「医療広告ガイドライン」の遵守です。これは、厚生労働省が定めた非常に厳格なルールです。
例えば、「当院は〇〇地域でNo.1の実績です」「最高の治療を提供します」といった表現。これらは「比較優良広告」や「誇大広告」として禁止されています。一般的な企業のサイト制作に慣れている業者は、集客のためにこういった強い言葉を使いたがりますが、医療機関では命取りになります。行政指導の対象になれば、地域での信頼を一瞬で失います。
また、患者への訴求力が高い「ビフォーアフター写真」も、単に写真を載せるだけではNGです。「治療内容、費用、主なリスク・副作用」など詳細な情報を併記しなければ掲載できないというルールがあります。
参考:厚生労働省『医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)』
医療機関のウェブサイトは広告規制の対象であり、虚偽・誇大広告の禁止、比較優良広告の禁止などが厳格に定められている。
「丸投げ」する場合でも、この「ガイドラインを熟知しているか?」という一点だけは、先生ご自身が業者に確認する必要があります。「ガイドライン?確認しながらやりますよ」と軽く答える業者ではなく、「もちろん対応しています。今のトレンドではここの表現に注意が必要です」と即答できるパートナーを選んでください。
どこまで任せられる?一般的な「丸投げプラン」の範囲と費用相場
- 原稿作成・写真撮影・サーバー設定まで含むのが「完全丸投げ」
- イニシャル(制作費)とランニング(月額管理費)のバランスを見る
- 安すぎるプランは「原稿は先生が書いてください」のパターンが多い
では、実際にどこまで任せられるのでしょうか。真の意味での「丸投げ」とは、以下の工程をすべて代行してもらうことを指します。
- サイト構成の企画(サイトマップ作成)
- 原稿ライティング(ヒアリングをもとにプロが執筆)
- 写真撮影(プロカメラマンの派遣)
- デザイン・コーディング
- ドメイン・サーバーの取得代行と設定
- Googleマップ(MEO)の基本設定
費用相場はピンキリですが、目安をお伝えします。
- 格安テンプレート型(30万〜50万円): 原稿は先生が用意。写真は素材集。独自性は低い。
- 中堅カスタム型(80万〜150万円): ライターによる原稿作成、カメラマン撮影が含まれることが多い。推奨ライン。
- 完全ブランディング型(200万円〜): ロゴ制作や動画撮影、競合調査まで含めたフルオーダー。
注意すべきは、「初期費用0円、月額5万円」のようなプランです。これは先述のリース契約に近い形態か、最低契約期間縛りがあるサブスク型が多く、トータルコストでは割高になる傾向があります。「どこまでが料金に含まれているか(特に原稿執筆と撮影)」は必ず見積もり段階で確認しましょう。
失敗しないクリニック専門制作会社選びの5つのチェックポイント
- 【実績】同科目の制作実績が豊富で、デザインのトーンがバラけているか
- 【所有権】解約時にドメインとデータを引き渡してくれる契約か
- 【修正】公開後の修正依頼は「月何回まで」「どの範囲まで」無料か
- 【システム】先生自身で「休診のお知らせ」などを更新できる仕組みか
- 【担当者】医療用語や保険診療の仕組みをある程度理解しているか
制作会社を選ぶ際、デザインの綺麗さだけで決めてはいけません。特に重要なのは「同科目の実績」と「担当者の理解度」です。
内科と美容皮膚科では、ターゲットも訴求ポイントも全く異なります。先生の専門科目の実績が豊富な会社なら、「この治療法なら、患者さんはこういう悩みで検索するはずだ」という勘所を押さえています。
また、担当者と話してみて、「自費診療と保険診療の違い」や「標榜科目」の話が通じない場合は避けたほうが無難です。いちいち医療用語を解説しなければならない相手への「丸投げ」は、かえって先生のストレスになります。
そして必ず確認してほしいのが、「ドメインとデータの所有権」です。契約書に「契約終了後は、ドメインおよび制作データの権利を甲(クリニック)に譲渡する」という旨の記載があるか、あるいは覚書を交わせるか。ここを曖昧にする会社は信用できません。
最小限の労力で最大の結果を出す「賢い丸投げ」のコツ
- 「素材」だけは渡す:パンフレット、ロゴ、既存の院内資料など
- 「インタビュー」を活用する:書くのではなく、喋ってライターに書いてもらう
- 「院長挨拶」と「診療方針」だけは、先生の言葉で熱を込める
丸投げといっても、「私の心の中を読んで勝手に作って」というのは不可能です。しかし、先生の労力を最小限にする方法はあります。
まず、開業時の事業計画書や、既存のパンフレット、院内掲示物など、手元にある資料をすべて担当者に渡してください。それだけで、制作会社はかなりの情報を吸い上げることができます。
次に、原稿を自分で書こうとしないこと。プロのライターが含まれているプランを選び、「インタビュー」を受けてください。「なぜ医師になったのか」「どんな患者さんを救いたいか」「この地域でどんな医療を提供したいか」。これらを30分〜1時間ほど熱く語っていただければ、プロが良い感じの文章に仕上げてくれます。
ただし、「院長挨拶」だけは、最終的に先生ご自身の目でしっかりとチェックし、魂を吹き込んでください。患者さんは「どんな先生が診てくれるのか」を最も不安に思っています。ここだけは、テンプレートの言葉ではなく、先生の「人柄」が伝わる言葉が必要です。これさえ押さえれば、あとはプロに任せても芯の通ったサイトになります。
ホームページ公開後に「放置」は厳禁?運用まで見据えた委託先選び
- Googleビジネスプロフィール(MEO)の運用もセットで考えられているか
- セキュリティ保守(WordPressの更新など)が含まれているか
- 「作って終わり」ではなく、毎月のアクセス解析レポートはあるか
ホームページは「公開した日」がスタート地点です。特にクリニックの場合、Googleマップ(MEO対策)との連携は命綱です。診療時間の変更や、臨時休診の情報がホームページとGoogleマップで食い違っていると、患者クレームの元になります。
制作会社を選ぶ際は、「公開後の保守サポート」の内容を重視してください。単なる「サーバー代」として管理費を払うのではなく、以下の対応が含まれているかを確認しましょう。
- WordPressなどのシステム更新(セキュリティ対策)
- 定期的なバックアップ
- 軽微な修正対応(テキスト変更や画像の差し替え)
- 簡易的なアクセス解析レポートの提出
特に、忙しい先生にとっては「LINEやメール一本で修正指示が出せる」環境が理想です。「修正のたびに見積もりが必要」という会社では、運用が億劫になり、サイトが放置されがちになります。スピード感を持って対応してくれるパートナーを選びましょう。
まとめ:信頼できるパートナーに任せて診療に専念できる環境を
ホームページ制作の「丸投げ」は、決して悪いことではありません。むしろ、多忙な先生にとっては「経営資源の選択と集中」という観点から、最も合理的な判断と言えます。
ただし、それは「信頼できるパートナー」を選べた場合に限ります。
- 医療広告ガイドラインを熟知しているか
- 所有権のリスクがない契約か
- 先生の負担を減らす「取材・提案力」があるか
この基準で選定すれば、先生は面倒なWeb作業から解放され、目の前の患者さんの診療に全力を注ぐことができます。そして、完成したホームページは、24時間365日、先生の代わりにクリニックの魅力を発信し、理想の患者さんを連れてきてくれる最強の味方となるはずです。
先生の「こだわり」と「時間」の両方を守れるパートナーと出会い、素晴らしいクリニック経営が実現することを心から願っています。