
「今のホームページは修正一つに時間がかかるし、維持費も高い…」そう感じてWixへの乗り換えを検討していませんか?
しかし、クリニックのサイト移行は一歩間違えると、予約メールが届かなくなったり、長年積み上げた検索順位が急落したりするリスクがあります。特に「ドメイン」と「サーバー」の関係を理解せずに契約を解除してしまうと、最悪の場合、HPが表示されない期間が数週間続いてしまうことさえあるのです。
本記事では、院長先生が安心して「管理しやすい理想のサイト」を手に入れるための、失敗しない乗り換え手順を全解説します。ITの専門用語は極力使わず、経営リスクを回避する視点でお伝えします。
なぜ今、多くのクリニックがWixへの乗り換えを選ぶのか
- 月額管理費のコストダウン(数万円→数千円へ)
- 診療時間の変更や休診のお知らせを即座に反映できる
- スマホ対応とSEOの強化が標準装備されている
かつてのクリニックホームページといえば、制作会社に初期費用で数百万円を払い、さらに月額数万円の保守費用を払い続ける「リース契約型」が主流でした。しかし、このモデルには大きな欠点があります。それは「スピード感の欠如」です。
「インフルエンザワクチンの在庫が切れたから告知したい」「台風で急遽午後の診療を休止したい」といった緊急時、制作会社にメールをし、対応を待つタイムラグは、患者様の不満に直結します。
Wixへの乗り換えが進んでいる最大の理由は、この「情報のコントロール権」を院長自身、あるいは院内のスタッフの手に取り戻せるからです。直感的な操作で、まるでブログを書くようにサイトを更新できるスピード感は、地域医療における信頼構築の強力な武器となります。
Wix Studioかエディタか?クリニックに最適なプランの選び方
- 自力で更新メインなら標準の「Wixエディタ」
- デザイン性を極め、プロに依頼するなら「Wix Studio」
- 予約機能や決済を使うなら「ビジネス」プランが必須
Wixには大きく分けて、従来からある「Wixエディタ」と、制作会社向けの高機能版「Wix Studio」があります。
もし、院長先生ご自身や事務スタッフの方が、今後こまめに写真の差し替えや文章の変更を行いたいのであれば、迷わず標準の「Wixエディタ」を選んでください。PowerPointを操作するような感覚で扱えるため、学習コストが低く済みます。
一方、「Wix Studio」はレスポンシブデザイン(画面幅に合わせた自動調整)が優秀ですが、操作画面がやや複雑です。こちらはプロに制作を依頼し、運用も半ば任せる場合に適しています。
また、プラン選びで注意すべきは「機能」です。単なる情報発信だけでなく、将来的にサイト内で「オンライン診療の決済」や「独自の予約フォーム」を稼働させたい場合は、必ず決済機能付きの「ビジネス」プラン以上を選択してください。
失敗を防ぐ!クリニックHPをWixへ移行する5ステップ
- ステップ1:現行サイトの契約内容とドメイン管理者の確認
- ステップ2:Wixで新サイトのデザインとコンテンツを作成
- ステップ3:SEO設定(リダイレクト準備)
- ステップ4:ドメイン接続と公開
- ステップ5:旧サーバーの解約(※必ず公開後に行う)
最も重要なのはステップ1と5の順序です。多くの先生がやりがちなミスは、「今の制作会社に解約を申し出てから、新しいサイトを作り始める」こと。これは絶対に避けてください。
解約のタイミングによっては、新サイトが完成する前に旧サイトが消滅し、インターネット上の「医院の住所」が空白になってしまいます。
まずは現在の契約書を確認し、「ドメイン(〇〇-clinic.comなどのURL)」の名義が誰になっているかを確認してください。制作会社名義になっている場合、ドメインの譲渡(移管)手続きが必要になります。この交渉は時間がかかることがあるため、早めの確認が必要です。
乗り換え時の最大の壁:ドメイン移管とメールアドレスの注意点
- ドメインの「移管」と「接続」は別物と心得る
- メールサーバーが変わると、今のメールが届かなくなる
- MXレコードの設定ミスは診療業務停止のリスク
ここが本記事で最も注意していただきたいポイントです。クリニックのIT移行で最もトラブルが多いのが「メール」です。
多くの場合、ドメインとメールアドレスはセットで管理されています。WixでHPを公開するためにドメインの設定を変更(ネームサーバーの変更)すると、そのドメインを使っていたメールアドレスも同時に設定が変わってしまい、送受信できなくなるリスクがあります。
これを防ぐには、以下の2つの方法があります。
- ドメイン管理は今の会社のまま、HPだけWixに向ける(ポインティング接続):
メール設定を変えずに、HPの表示先だけをWixにする方法です。技術的なリスクは低いですが、旧会社へのドメイン管理費は継続する可能性があります。 - Google Workspace等へメールを移行する:
Wixへの完全移行を機に、メールシステムをGmailのビジネス版(Google Workspace)などに切り替える方法です。セキュリティも向上し、スマホでの確認も容易になりますが、初期設定(MXレコードの設定)には専門知識が必要です。
「とりあえずWixにつなげばいい」と安易に考えると、翌朝から製薬会社や患者様からのメールが一切届かなくなる事態になりかねません。ここは慎重な判断が必要です。
既存のWeb予約システムをWixサイトと連携させる方法
- 無理にWixの予約機能を使わず、外部システムと共存させる
- 「予約する」ボタンで外部リンクさせるのが最も安全
- 電子カルテ連携がある場合、既存システム維持は必須
Wixには「Wixブッキング」という予約機能がありますが、多くの日本のクリニックで使われている予約システム(ドクターキューブ、アイチケット、チェックオンなど)や電子カルテとの連携機能は、基本的にはありません。
そのため、「HPを新しくするから予約システムもWixのものに変えよう」と考えると、現場のオペレーションが大混乱します。
正解は、「HPのデザインはWixで刷新し、予約ボタンを押したら既存の予約システム画面へ飛ばす」という構成です。これなら、受付スタッフのオペレーションを変えることなく、入り口であるHPだけをモダンにリニューアルできます。Wix側では、目立つ場所に「Web予約はこちら」というボタンを設置するだけで十分です。
検索順位を落とさない!移行時に必ずやるべきSEO対策
- 「301リダイレクト」で旧URLの評価を引き継ぐ
- ページタイトルとメタディスクリプションを移植する
- Googleサーチコンソールで「アドレス変更」を通知する
「HPを新しくしたら、地域名+診療科の検索順位が圏外に飛んでしまった」。これは、URL構造の変化が原因です。
例えば、旧サイトの院長紹介ページが `clinic.com/doctor.html` で、Wixで作った新ページが `clinic.com/doctor` だとします。Googleはこれを「全く別の新しいページ」と認識し、これまでの評価(被リンクや閲覧数など)をリセットしてしまいます。
これを防ぐのが「301リダイレクト」という設定です。「旧住所に来た人を、自動的に新住所へ転送する」郵便の転送届のようなものです。Wixの管理画面には「SEO設定」の中にリダイレクト設定ツールがあります。主要なページについては、必ずこの設定を行ってください。
医療広告ガイドラインの遵守とWixでの修正作業のコツ
- 「最高」「No.1」などの比較優良表現はNG
- ビフォーアフター写真は「詳細な治療説明」とセットで
- ガイドライン違反も、Wixなら即座に修正可能
厚生労働省の「医療広告ガイドライン」は年々厳しくなっています。古いHPのまま放置していると、知らず知らずのうちに違反状態(例:患者様の体験談をそのまま掲載している、加工したビフォーアフター写真を載せている等)になっていることがあります。
Wixに乗り換えるメリットは、万が一保健所から指摘が入った場合や、ガイドラインの改正があった場合に、業者を介さず「その場ですぐに修正できる」点にあります。
新サイトを作る際は、コンテンツをコピー&ペーストするだけでなく、現在のガイドラインに抵触していないか再チェックする良い機会です。特に自由診療を扱うクリニックでは、料金やリスク・副作用の明記が必須ですので、Wixのテキストボックス機能を使って分かりやすく記載しましょう。
自力で移行するかプロに頼むか?判断基準とコスト相場
- 時間はコスト。院長の時給を考えて判断する
- メール移行やSEO対策に不安があるならプロへ
- Wix専門の支援なら「アカウントごとの譲渡」が可能
最後に、これを「院長自らやるべきか」についてです。Wixは確かに簡単ですが、ここまでお話しした「ドメイン設定」「メールサーバー設定」「リダイレクト設定」を完璧に行うには、それなりのITリテラシーと学習時間が必要です。
判断基準:
- DIYがおすすめ: HP作りが好きで、休日に数時間の時間を割ける。または、ITに強い事務スタッフがいる。
- プロ依頼がおすすめ: 診療が忙しく時間がない。現在のメール環境を変えたくない。検索順位を絶対に落としたくない。
プロに依頼する場合でも、従来の制作会社のように「独自システムで作る」のではなく、「Wixで構築代行をしてもらう」契約にすれば、納品後はご自身で更新が可能です。Wixには「サイト転送機能」があり、プロが自分のアカウントで作ったサイトを、完成後に院長のアカウントへ完全に譲渡(オーナー権限の移動)することができます。
これにより、「所有権はクリニック、面倒な構築はプロ」という良いとこ取りが可能です。
クリニックのホームページは、単なる看板ではなく、患者様と医院をつなぐ大切なインフラです。目先の月額費用削減だけでなく、「将来にわたって医院側が主導権を握れるか」という視点で、Wixへの乗り換えを検討してみてください。