
「ホームページ制作会社と連絡が取れなくなった」「解約しようとしたら高額な違約金を請求された」。これらはレンタルサーバーの契約代行を巡って実際に起きているトラブルです。ITに詳しくないからと、サーバーやドメインの契約を丸投げしていませんか?最悪の場合、大切に育てたWebサイトやメールアドレスをすべて失う恐れがあります。本記事では、後悔しないための防衛策と、安全な管理方法を解説します。
レンタルサーバーの契約代行でよくあるトラブルの実態
- 突然サイトが表示されなくなり、制作会社とも音信不通になる
- 毎月の「管理費」の内訳が不明瞭で、実費の数倍を請求されている
- 解約を申し出たら「ドメインは渡さない」と脅される
「サーバーやドメインのことはよく分からないから、プロにお任せします」
その一言が、数年後に経営者を震え上がらせる時限爆弾になることがあります。私はこれまで、多くの店舗や中小企業のWeb集客を自動化する支援をしてきましたが、この「契約の丸投げ」によるトラブル相談は後を絶ちません。
最も多いのが、制作会社やフリーランス個人の廃業・音信不通です。
ある日突然、自社のホームページが見られなくなる。メールが送受信できなくなる。慌てて制作会社に連絡しても繋がらない。実は、サーバーの契約更新料が支払われておらず、サーバー会社によってデータが削除されていた……という事例は、決して珍しい話ではないのです。
また、不透明なコスト構造も問題です。
レンタルサーバー代の実費は月額1,000円〜数千円程度が相場ですが、それを伏せて「保守管理費」として月額数万円を請求されているケースも散見されます。もちろん、純粋な保守作業(更新やバックアップ)が含まれていれば正当な対価ですが、「ただ契約を代行しているだけ」でマージンを取られ続けているなら、経営として見直すべきコストです。
なぜトラブルが起きる?制作会社に任せっきりにするリスク
- 契約の名義人が「制作会社」になっているため、自社で手が出せない
- 制作会社側の資金繰り悪化やミスが、自社のサイト停止に直結する
- 「人質」としてサイトを使われ、不当な要求を飲まざるを得なくなる
なぜ、これほどまでにトラブルが絶えないのでしょうか。その根本原因は、「契約上の所有者(名義人)」と「実際の利用者(あなたの会社)」が異なっていることにあります。
多くのレンタルサーバー会社では、「契約名義人 = サイトの所有者」として扱います。
たとえ制作費を出したのはあなたであっても、サーバー契約の名義が制作会社になっていれば、法的には(あるいはサーバー会社の規約上は)、そのサイトの生死を握っているのは制作会社です。
制作会社が悪意を持っているとは限りません。しかし、彼らが事務手続きを忘れたり、クレジットカードの支払いが滞ったりしただけで、あなたの会社のWebサイトは道連れになります。自社の資産を、他人の財布と管理能力に完全に依存させてしまう構造そのものが、最大のリスクなのです。
「ドメイン所有権」が他人の手に渡ることの恐ろしさ
- ドメインはネット上の「住所」であり、ブランドそのもの
- ドメイン権限を握られると、メールアドレスもすべて使用不能になる
- 長年積み上げたSEO評価(Google検索順位)が一瞬でゼロになる
サーバー以上に恐ろしいのが、ドメイン(〇〇.com や 〇〇.jp)の権利問題です。
Webサイトのデータ(サーバーの中身)は、最悪の場合、バックアップがあれば別のサーバーで復旧できます。しかし、ドメインを失うということは、「お店の看板と住所」を同時に奪われることと同義です。
もし制作会社と揉めて「ドメインは返さない」と言われたらどうなるでしょうか?
そのドメインを使っている社員全員のメールアドレスが使えなくなります。取引先との連絡網が寸断されます。名刺やパンフレットに刷ったURLもすべて無効になります。そして何より、長年かけてGoogleからの評価(SEO)を積み上げてきたドメインパワーを失えば、検索順位は圏外に飛び、集客はゼロからやり直しです。
「ドメイン代行」は、自社の実印を他人に預けているようなものだと認識してください。
契約トラブルを未然に防ぐ!安全な「自社契約・外部管理」の仕組み
- 「金銭的な契約」は自社、「技術的な管理」は制作会社と切り分ける
- サーバー会社のアカウント権限委譲機能を活用する
- クレジットカードは必ず「自社名義」のもの登録する
では、ITに詳しくない経営者はどうすればいいのでしょうか?
答えはシンプルです。「契約と支払いは自社、作業はプロ」という体制を作ることです。
さくらインターネットなどの主要なレンタルサーバー会社には、このための仕組みが用意されています。
- 契約主体(アカウント保持者): あなたの会社
- 支払い設定: あなたの会社のクレジットカード
- 技術担当者への権限付与: 制作会社のアカウントを「管理者」として招待
この形であれば、制作会社はサイトの更新や設定変更が自由にできますが、契約そのものを勝手に解約したり、ドメインを持ち逃げしたりすることはできません。万が一、制作会社と連絡が取れなくなっても、あなたは管理画面から彼らのアクセス権を削除し、新しいパートナーを探すだけで済みます。
これこそが、資産を守りつつプロの手を借りる、最も健全な「自社契約・外部管理」の形です。
すでに代行されている場合のチェックリスト:あなたのサイトは大丈夫?
- サーバー・ドメイン費用の請求書は「制作会社」から来ているか?
- サーバーの管理画面(コントロールパネル)に自社でログインできるか?
- ドメインの登録者情報(Whois情報)が自社名義になっているか?
今すぐ確認してください。もし以下の項目に一つでも当てはまるなら、あなたのサイトは「不安定な状態」にあります。
- 1. 請求元がサーバー会社ではない
サーバー会社(Xserver、さくらインターネット等)から直接請求が来ておらず、制作会社からの請求書に「サーバー代」が含まれている場合、契約名義は制作会社になっている可能性が高いです。 - 2. ID・パスワードを知らない
「何かあったら連絡してください」と言われ、サーバーの管理画面に入るためのIDとパスワードを共有されていない場合、あなたは自社の資産に鍵をかけられ、その鍵を他人に預けている状態です。 - 3. Whois情報が制作会社名義
「Whois検索」というツールで自社のドメインを調べてみてください。「Registrant Name(登録者名)」が自社名になっていなければ、そのドメインの法的な所有者はあなたではありません。
制作会社と揉めずに「契約主体」を自社に変更する交渉術
- 「不信感」ではなく「社内ルールの変更」を理由にする
- インボイス制度や税理士の指導を理由に「直接払いにしたい」と伝える
- 「管理・運用は引き続きお願いしたい」と添えて安心させる
すでに代行契約をしてしまっている場合、「リスクがあるから名義を変えてくれ」とストレートに言うと、相手のプライドを傷つけたり、「信用していないのか」と関係が悪化したりする恐れがあります。
ここで重要なのは、「相手の顔を立てつつ、実利(権利)を取り戻す」交渉術です。以下のように伝えてみてください。
【交渉用トークスクリプト】
「社内の経理体制を見直しており、税理士から『インフラ関係の固定費は、契約元からの直接請求書(またはカード明細)で保存するように』と指導が入りました。
つきましては、サーバーとドメインの契約名義を弊社に変更し、弊社カードで直接決済するように切り替えたいのです。
もちろん、サイトの保守・管理については引き続き〇〇さんにお願いしたいので、権限委譲の設定など、移行作業のお見積りをいただけますでしょうか?」
この言い方なら、相手は「管理費」という名目の利益を失うかもしれませんが、「保守作業費」として関わり続ける道は残ります。また、理由はあくまで「経理上の都合」なので、角が立ちにくいのです。
トラブル発生!連絡が取れない・移管を拒否された時の相談先
- サーバー会社への直接相談(支払証明などが必要)
- 「使用権」を主張するための法的手段の検討
- どうしようもない場合は、ドメイン変更のリスクを受け入れ新規契約
もし、すでに制作会社と連絡が取れない、あるいは不当な理由で移管を拒否されている場合は、以下の手順で動いてください。
- 1. サーバー会社・ドメイン管理会社への相談
利用しているサーバー会社が判明しているなら、サポート窓口に事情を話してください。通常、第三者への情報開示は行われませんが、「サイトの実質的運営者である証明(サイト上の会社情報など)」や「制作会社への振込履歴」などを提示することで、例外的に救済措置がとられるケースもあります(※必ず成功するとは限りません)。 - 2. 弁護士・消費者センターへの相談
ドメインの所有権を盾に金銭を要求されている場合などは、明らかに不当な取引です。IT紛争に強い弁護士や、公的な相談窓口に頼るのが賢明です。 - 3. 【最終手段】新規ドメインでの再出発
どうしても取り戻せない場合、時間を浪費してビジネスを止めるよりは、新しいドメインを取得して、新しいサーバーでサイトを作り直す決断も必要です。その際は、二度と同じ過ちを繰り返さないよう、必ず「自社名義」で契約してください。
まとめ:資産としてのWebサイトを守るために経営者がすべきこと
- サーバー・ドメインは必ず「自社名義」で契約し、支払いを直接行う
- 制作会社には「管理者権限」だけを渡す
- 現在代行されているなら、「経理上の理由」でスマートに権利を取り戻す
Webサイトは、24時間365日働き続けてくれる、あなたの会社の優秀な営業マンであり、重要な「事業資産」です。
店舗を借りる時、大家さんとの契約を内装業者に任せる人はいませんよね?
それと同じで、ネット上の土地(サーバー)と住所(ドメイン)の契約は、必ず経営者自身(または自社)の名前で行ってください。
- サーバー・ドメインは必ず「自社名義」で契約し、支払いを直接行う
- 制作会社には「管理者権限」だけを渡す
- 現在代行されているなら、「経理上の理由」でスマートに権利を取り戻す
「難しそうだから」と思考停止して丸投げすることは、会社の鍵を他人に渡したままにするのと同じです。
もし今、少しでも不安を感じたなら、まずは現在の契約状況を確認することから始めてください。それが、あなたのビジネスを守る第一歩になります。